微分方程式の解法~未定係数法~
微分方程式<未定係数法>
ここでは,定数係数の非同次方程式の解き方を述べる.そのような微分方程式において,常にうまくいく一般的な方法の定数変化法があるが,未定係数法は特別な場合に適用でき,非常に明快で有用な方法である.
非同次方程式の一般解を, \begin{align} y(x)=y_h(x)+y_p(x) \end{align} と表現することにする.ここで,$y_h(x)$は同次方程式の一般解であり,$y_p(x)$は非同次方程式の特殊解である.ゆえに,この特殊解$y_p(x)$を求めることが目標となる.
未定係数法は, \begin{align} y''+ay'+by=r(x)\quad\cdots(\mathrm{i}) \end{align} で表される,定数係数の微分方程式に適用される.ここで,$r(x)$は特別な初等関数であり,指数関数,多項式,余弦および正弦関数または,これらの関数の和や積である.これらの初等関数の類似点があるとすれば,なにが思いつくだろうか.これらには,その導関数がもとの関数の形に似ているという特徴がある.この特徴が未定係数法の要点である.つまり,$y_p(x)$に$r(x)$に似た形の関数を選び,それを代入し,係数を求めるという方針である.
以下には,具体的な計算手順,およびいくつかの規則を示す.
(1) 計算手順
(i)の$r(x)$と$y_p(x)$が,以下の対応関係となるような関数を選択する.そして,$y_p(x)$とその導関数を(i)に代入して未定係数を求める. \begin{align} &"r(x)\rightarrow y_p(x)"\\ &ke^{\gamma x}\rightarrow Ce^{\gamma x}\\ &kx^n\quad(n=0,1,\cdots)\rightarrow K_nx^n+K_{n-1}x^{n-1}+\cdots +K_1x+K_0\\ &k\cos\omega x,k\sin\omega x\rightarrow K\cos\omega x+M\sin\omega x\\ &ke^{\alpha x}\cos\omega x,ke^{\alpha x}\sin\omega x\rightarrow e^{\alpha x}(K\cos\omega x+M\sin \omega x) \end{align} また$r(x)$が定数の場合には,$y_p(x)$に定数をとればよい.
(2) 修正則
$y_p(x)$として選択した項が,(i)の同次方程式の解になってしまったときは,その解が同次方程式の特性方程式の単根となっているならば$y_p(x)$に$x$を乗じ,重根に相当しているならば$y_p(x)$に$x^2$を乗じる.
(3) 和の規則
$r(x)$と$y_p(x)$が上述した対応関係の和で表現されている場合,例えば, \begin{align} r(x)=ke^{\alpha x}+k\cos\omega x \end{align} のようなとき,それぞれの項に対応する$y_p(x)$の和を用いる.
以下に,例題を示す.
問
非同次方程式, \begin{align} y''+4y=8x^2 \end{align} の解を求めよ.
$r(x)=8x^2$だから,$y_p(x)=K_2x^2+K_1x+K_0$とする.$y''(x)=2K_2$を代入して, \begin{align} 2K_2+4K_2x^2+4K_1x+4K_0=8x^2\\ \therefore K_0=-1,K_1=0,K_2=2 \end{align} また,同次方程式の一般解は,その特性方程式から \begin{align} \lambda^2+4=0\\ \therefore \lambda=\pm 2 \end{align} よって, \begin{align} y_h(x)=A\cos2x+B\sin2x \end{align} ここで,$A,B$は任意定数である.
ゆえに,この方程式の一般解は, \begin{align} y=A\cos2x+B\sin2x+2x^2-1 \end{align} となる.
ここで,$y_p(x)=K_2x^2$とした場合,つまり$r(x)$の次数の項のみとした場合には解が求まらないことが分かる.
問
非同次方程式, \begin{align} y''-3y'+2y=e^x \end{align} の解を求めよ.
同次方程式の一般解は,$y_h(x)=c_1e^x+c_2e^{2x}$であり,$y_p(x)$は$Ce^x$としたいが,これは同次方程式の単根に相当するので,特殊解$y_p(x)=Cxe^x$とすると,解が求まる.