トランジスタについて

トランジスタの分類

図1:トランジスタの分類

 トランジスタはその構造から,大別して,バイポーラトランジスタと電界効果トランジスタ(FET:field effect transistor)がある.ここでは,バイポーラトランジスタについてその性質を述べる.

 図2は,バイポーラトランジスタの回路図である.

図2:バイポーラトランジスタの回路図

 バイポーラトランジスタは三つの端子を持ち,それぞれベース,コレクタ,エミッタと呼ばれる.

バイポーラトランジスタの電流,電圧特性

 図3は,バイポーラトランジスタの電流,電圧を示している.

図3:バイポーラトランジスタの電流・電圧

 npn形とnpn形では,電圧および電流の向きが逆である.これらの電圧と電流の関係を図4に示す.

図4:バイポーラトランジスタの特性グラフ

 図(a)は,ベースエミッタ間電圧に対する,ベース電流の関係を示している.この関係は,ダイオードの特性と同じものである.これは,ベースとエミッタがpn接合となっているため当然である.

 図(b)は,コレクタエミッタ間電圧に対するコレクタ電流の変化を示したものである.コレクタ電流は,コレクタエミッタ間電圧に依存せず一定の値をとることが分かる.コレクタ電流は,ベース電流によって図の異なった曲線をとる.

 $I_\mathrm{C}$と$I_\mathrm{B}$には, \begin{align} I_\mathrm{C}=\beta_0I_\mathrm{B} \end{align} なる関係がある.ここで,$\beta_0$は比例定数で,直流電流増幅率である.その大きさは,$100\sim 500$程度である.

 このように,コレクタ電流はベース電流によって制御される.

 また,ベース電流,コレクタ電流およびエミッタ電流にはキルヒホッフの法則に基づき, \begin{align} I_\mathrm{E}=I_\mathrm{C}+I_\mathrm{B} \end{align} なる関係があり, \begin{align} I_\mathrm{E}=I_\mathrm{C}+\dfrac{I_\mathrm{C}}{\beta_0}=\biggl(1+\dfrac{1}{\beta_0}\biggr)I_\mathrm{C} \end{align} とできる.ここで,$\beta_0\gg1$であるから,上式は次のように近似できる. \begin{align} I_\mathrm{E}\fallingdotseq I_\mathrm{C} \end{align} また, \begin{align} I_\mathrm{B}=\dfrac{I_\mathrm{C}}{\beta_0}\fallingdotseq \dfrac{I_\mathrm{E}}{\beta_0} \end{align} とでき,$\beta_0\gg1$であるから,$I_\mathrm{B}$は,$I_\mathrm{C},I_\mathrm{E}$に比べて,無視し得る程度に小さい電流であることが分かる.