ブロッホの定理~ブロッホ関数~

 ブロッホ(Ernst Simon Bloch)は,周期ポテンシャルに対するシュレーディンガー方程式の解が \begin{align} \psi_\mathrm{k}(\boldsymbol{r})=u_\mathrm{k}(\boldsymbol{r})\exp(i\boldsymbol{k}\cdot \boldsymbol{r}) \end{align} という特別な形を持つという重要な定理を証明した.

 ここで,$u_\mathrm{k}(\boldsymbol{r})$は結晶格子の周期をもち,$u_\mathrm{k}(\boldsymbol{r})=u_\mathrm{k}(\boldsymbol{r}+\boldsymbol{T})$という関係を満たす.$\boldsymbol{T}$は格子の並進ベクトルである.

 平面波$\exp(i\boldsymbol{k}\cdot \boldsymbol{r})$と$u_\mathrm{k}(\boldsymbol{r})$の積の形で,波動関数の固有関数が表現される.

 この式の形の電子波動関数は"ブロッホ関数"と呼ばれ,進行波の和に分解され,これを集めてイオン核のポテンシャルの場を自由に伝搬する電子を表現する波束の形にすることができる.

 定理の証明は以下である.

 長さ$Na$の輪上で$N$個の同等の格子点を考える.ポテンシャルエネルギーは周期$a$で周期的であり,$U(x)=U(x+na)$と表現される.ここで,$n$は整数である.対称性から \begin{align} \psi(x+a)=E\psi(x)\quad(\mathrm{A}) \end{align} という波動関数を考える.輪を一周すると,$\psi(x)$は1価関数であるから, \begin{align} \psi(x+Na)=\psi(x)=E^N\psi(x) \end{align} とできる.よって,$E$は1の$N$乗根の一つとなり, \begin{align} E=\exp\biggl(i\dfrac{2\pi n}{N}\biggr)_,\quad n= 0,1,2,\cdots,N-1 \end{align} となる.ゆえに \begin{align} \psi(x)=u_\mathrm{k}(x)\exp\biggl(i\dfrac{2\pi nx}{Na}\biggr) \end{align} は,$u_\mathrm{k}(x)$が$a$の周期を持つ,つまり$u_\mathrm{k}(x)=u_\mathrm{k}(x+a)$であれば,(A)式を満たすことが分かる.以上がブロッホ関数と一致する.


文献 キッテル固体物理学入門 (丸善,2005)